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福岡家庭裁判所久留米支部 昭和53年(少)1037号 決定 1978年10月27日

主文

少年を中等少年院に送致する。

理由

(罪となるべき事実)

少年は、

1  自動車運転の業務に従事するものであるが、昭和五三年三月三〇日午後二時四〇分ごろ、軽四輪乗用自動車を運転し、福岡県大牟田市○○町×丁目××番地の×先道路上を○○町方面から○○町方面に向け、時速約七〇キロメートルで進行していた際、このような高速度で進行中に急転把すればハンドルをとられ、自車の安定を失うおそれがあるから、ハンドル、ブレーキ等を確実に操作すべき注意義務があるのにこれを怠り、交通閑散なのに気を許し、同乗していた二名の女友達の歓心を得る目的でふざけてジグザグ運転をし、そのとき自車が道路中央線右側にはみ出たためあわてて前記速度のまま左に急転把した過失により、自車の安定を失い、進路左前方歩道上に暴走させ、歩道に座つて遊んでいたA、B(いずれも当時七年)に対し自車右側部分を衝突させ、よつてAをして右外傷性気胸、頭蓋底骨折により、同日午後三時二〇分、同市○○町×丁目×番地所在の○○病院において死亡するに至らせ、Bに対し加療約二か月間を要する左下腿骨皮下骨折等の傷害を負わせ

2  同年四月二五日午後一時ごろ、同市○○町×丁目所在の○○体育館横駐車場において、C所有の自転車一台(時価一万五、〇〇〇円相当)を窃取し

たものである。

(上記事実に適用すべき法令)

上記1の事実につき 刑法二一一条前段

上記2の事実につき 刑法二三五条

(中等少年院送致の事情)

1  本件のうち業務上過失致死傷事件(以下本件事故という。)は、前記のとおり、制限速度を約三〇キロメートル超過する高速度で進行中に女友達の歓心を得るためジグザグ運転をし、その結果自車を歩道上に暴走させ、児童二名を死傷させた事案であつて、過失の内容、程度及び発生した結果を考えるとき、少年の責任は極めて重大であると言わなければならない。

2  このような本件事故の重大性に照らせば刑事処分も十分考えられるところであるが、少年は未だ一八歳であり、本件事故も普通自動車運転免許を取得して約二か月後のものであること、本件事故の過失自体前記のような思慮浅薄な、未熟な精神構造に起因するものであること、少年は本件事故の約一年半前に恐喝事件に追従加担したことがあり、また事故後一か月も経ないうちに自転車窃盗を犯すなど日頃の生活態度に安易かつ軽率な一面が見受けられること等の諸点を考慮すると、少年に対しては未だ保護処分で臨むのが相当である。そして、その保護処分としては少年院送致以外には考えられない。

3  そこで少年院における処遇期間について検討すると、本件事故の重大性及び本件事故における過失が日頃の安易かつ軽率な生活態度に結びついたものであること等を考慮すると、四か月以内の交通短期処遇では、基本的な生活態度の改善及び思考の深化には不十分であると言わざるを得ない。従つて、交通短期処遇の勧告は、これをしないこととする。

4  よつて、少年法二四条一項三号、少年審判規則三七条一項、少年院法二条三項により主文のとおり決定する。

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